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一般社団法人クラウド活用・地域ICT投資促進協議会(CLOUDIL)によるコラムです

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CLOUDILコラム: 2020年1月

医療ITの最大の課題をすぐさま解決してしまった「クラウド」

 過去30年間で起きた技術的イノベーションの中で、クラウドほど医療のITに貢献した技術はないかもしれません。クラウドと通信ネットワーク技術の進化は、医療のITを大きく変え、現在も変革の中心的技術となっています。

 「変革の中心的技術」というと、なんだか、一部の先端的な医療機関だけの話のような印象を受けますが、クラウドが興した変革は、規模の小さな組織や機関にも多大な影響を及ぼしています。

 かつて、医療ITの最大の課題は、カルテの電子化とレントゲンなどの診療データをいかに効率的に保存するか、でした。

 カルテの電子化は、PCなどの情報端末の価格が低下していくのはわかっていましたし、ユーザーが増えることで、カルテ用のソフトウェアもどんどん機能向上していくことは予想できました。しかし診療時の画像データの保存は、大きな難題でした。

 というのも、過去のデータも含めて、電子化して画像データとして保存・活用していくことは、技術的には無理な話ではないにしても、コストがかかりすぎました。しかも、そのコストがすぐに下がっていくことはなかなか考えにくかったのです。

 医療機関の画像データは、個人のプライバシーにもかかわりますし、途中で紛失したり間違って消去したりされてはなりません。したがって、信頼できるシステムで構築された場所に、一定の品質を持った記録媒体を使って保存する必要がありました。そうした仕組を活用することは、たとえ、資金力のある大規模病院でも容易ではなく、一部の先進的な医療機関が構築したことはあっても、なかなか他の組織が追随することはなかったのです。

 ところが、クラウドの技術が登場して状況が一変しました。ストレージに活用するディスクの価格が急に低下したわけではなく、関連のソフトウェアの価格が急に下がったわけでもありません。

 仮想化技術によって、従来と同じ価格のディスクに記録できる情報の量が大幅に増加したのです。この技術により、医療データの保存コストも下がりはじめ、利用者が増加するにつれ、ディスク自体の価格も下がっていき、さらに低コストで大量の電子化されたデータを保存できるようになりました。

 中堅規模以上の病院で、こうしたデータ保存の方法が取り入れられるようになると、さらに小規模の「町のかかりつけ医院」でもクラウドの活用が進むようになってきました。自宅近くのかかりつけ医院と、設備の整った大型病院のデータ連携もスムーズに行われるようになることで、命の危険にもつながる大病を未然に防ぐ体制も次第に整いつつあります。

 そして今、医療におけるクラウドは、さらに進化しています。医療用の画像データの保存だけでなく患者のバイタルデータを始めとする、日々増えていくさまざまなデータも、保存、利活用するようになりました。クラウドは、ただの保存場所ではなく、アプリケーションを搭載したプラットフォームとして機能し、データの分析や機械学習などに利用されています。

 クラウドは、従来の技術の進化スピードを大幅に早め、さまざまな関連技術の発展にも寄与しています。

 これまでの技術進化の過程を考えれば、医療データの保存を従来のストレージシステムで行いながら、少しずつ利用者が増えることで、ディスクやシステム関連製品の価格が下がっていき、さらに利用者が増えていくという道筋になるはずですが、このプロセスでは小規模の病院が医療データを電子テータにして診療を進めるようになるには、さらに時間がかかったことでしょう。

 ところが、クラウドが登場することで、一気に利用コストが下がり、利用者が爆発的に増加することで、さらにサービス提供者が増え、競争が起こることでよりユーザーの利便性が上がっていくという流れが、すごいスピードで進んでいきました。クラウドが「破壊的技術」だと言われるのはこのためです。従来の技術進化のスピードだけを見てビジネスを行っていた企業は、市場から退場せざるを得なくなり、クラウドという技術を前提としたサービス提供が求められるようになったわけです。

 そして、クラウドのような破壊的な技術が多くのユーザーが利用するようになると、関連の技術も大きく進展します。記憶媒体も、容量、転送スピードともに限界が来ていたディスクから、フラッシュメモリなどの新しい媒体が、どんどん製品化されるようになり、また、ネットワーク技術もより進化し、より早く、より大量にデータを送信することが可能になってきました。

 いま、わたしたちは、クラウドというイノベーションの時代に立っていることを忘れてはならないでしょう。つまり、これからも従来の常識からは考えられないようなスピードで、新しい製品やサービスが開発されるようになるかもしれないということです。

 そして、そうした製品やサービスは、必ずしも大きな組織から生まれるとは限らないということも意識すべきです。クラウドの技術は既存の技術をうまく利用することでこの世に生み出されました。しかし、クラウドそのものを開発した企業や組織が、すべての利益を独占しているわけではありません。この技術を上手に利用して新しいサービスを提供する組織が市場のリーダーとして君臨しています。

 今後も、クラウドという技術の周辺で、さまざまな変革が進められていくことでしょう。その小さな変革の予兆を見逃さず、例えば医療ITで起きた現象と似た事象をビジネスチャンスにしていくことも、たとえあなたが大きな組織の中にいなくても可能なはずです。

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