メニュー

コラム

一般社団法人クラウド活用・地域ICT投資促進協議会(CLOUDIL)によるコラムです

TOP>コラム一覧>無店舗のネット販売だけではない、リアル店舗の改革にも影響を及ぼすクラウド

CLOUDILコラム: 2020年2月

無店舗のネット販売だけではない、リアル店舗の改革にも影響を及ぼすクラウド

 先日、都市部の一等地に店舗を持つ百貨店の多くが、他の専門量販店に売り場を貸す事業に注力するというニュースが流れていました。

 もはや「百貨店」という業態自体が特殊なものになってきていますので、このニュースのみでもって、「リアル店舗の時代は終わり、無店舗のネット販売中心の時代に変わっていく」といいきることはできないでしょう。

 入店時にスマートフォンで本人確認したあとは、商品をそのまま持って帰っても自動的に決済されてしまう、「自動決済サービス」などもあります。これも無人レジと同種のサービスですね。

 「デジタルサイネージ」は、売り場に設置されたカメラ映像から、その棚の前で商品を選んでいる来店客の性別、年齢などの属性を把握し、その人に合った広告をサイネージ(電子看板)に出すというものです。また、各商品の値札もデジタル化してデータをもとにリアルタイムで変えるということもできます。これによって、値札交換など人手に頼むしかなかった作業が効率化できます。

 小売業そのものは、国内でも大きな産業です。しかし、その中の1社1社のプレーヤーは、それほど資本力が大きくないことがほとんどで、したがって、設備投資に対しても慎重なケースが大半です。ネットではなく、リアル店舗に対する投資は当然簡単に決められるものではありません。

 そんな小売業の中で、かねてからIT投資が進められてきたのは、レジスター、つまり決済周りの仕組みと、あとは防犯の仕組みです。レジスターの能力が上がると、お客の列が進みやすくなり、その分売上アップの効果も十分に期待できます。そして、万引きなどの防犯は店舗の経営を左右する重大な施策でした。だからこそ、高価なカメラシステムとガードマンなど、人手による見回りなどにコストをかけられてきたのです。

 しかし、長引くデフレ不況と人手不足の中、それほど防犯にもコストをかけられなくなっていきました。そこに出現したのがインターネットと動画のデジタル化です。小売店では専用の回線とカメラとシステムに多額の費用をかけることなく、廉価に防犯システムを構築できるようになりました。そしてその仕組みは、クラウドによってサービス化され、より激しい価格競争が繰り広げられるようになりました。

 また、クラウドはセキュリティ面でも次第に信用されるようになってきた、という面もあります。レジスターなど決済周りの仕組みでは、レジを通して顧客データも扱うので、日々データが蓄積される先の信頼性は必須です。そのため、クラウドサービスが出始めたころは「セキュリティの懸念が払しょくされないと、小売業のクラウド活用は進まないだろう」といわれていました。しかし、現在では顧客データをクラウドに蓄積することは、もちろん慎重に進めなくてはいけませんが「タブー」として扱われるテーマではなくなっています。

 このように、現在、「無人レジ」や「デジタルサイネージ」など最先端のソリューションとともに語られる「売り業のクラウド活用」ですが、本をただせば「価格破壊」が最大のきっかけになっていました。「無人レジ」や「デジタルサイネージ」などは、今の売り場、仕事の現場をがらりと変えてしまう可能性を持つ革新的な技術ですが、そこには、当然、人的コストや管理コストの削減効果が加味され、そのうえで「期待の新技術」と謳われているのです。

 では、こうした革新的なソリューションは、今の小売店舗に、コストを安くして儲けを増やせるとして、どんどん導入されるようになるでしょうか。これまで、カゴに商品を入れ、レジに並び、現金で店員に支払いをしていた顧客の習慣を変えることはできるでしょうか。

 もちろん、年配の人でも、若い人たちと同じようにスマートフォンなどで決済することをいとわない人もいるでしょうし、そうした先端の店が増えてくれば世代を問わず、新しい買い物の仕方に慣れてくる人も増えてくるでしょう。

 しかし、「ほとんどの買い物客が、企業側が宣伝する『新しい顧客体験』なるものをこぞって受け入れるかというと、それは疑問だ。従来型の店舗は残り続けるだろう」と考える人が多いはずです。

 おそらく「最先端技術による新しい顧客体験」はまだ何かが足りないのでしょう。店舗を運営する企業側には、さまざまなメリットがあることはわかっていますが、顧客側に、本当にどんなメリットがあるのかが明確になっていないのかもしれません。

 ここで必要なのは、小売業界全体でさまざまな、いくつもの試行錯誤が重ねられることです。多大な投資ですから、失敗は決して許容されるものではありませんが、それでも失敗はどうしても発生してしまいます。

 問題は、現状のリアル店舗は何かしらの変化が必要であり、より低コストで効率的な運営が求められていることは確かなのですから、試行錯誤の途中の失敗も、上手に回収できる取り組み方が求められているといえるでしょう。その時に、クラウドサービスは、大きな力を発揮します。システムの構築や運用、再構築、改修などを素早く、コスト負担を少なくできる可能性が高いからです。

 このように試行錯誤を上手に重ねていくことで、いつか、「最先端技術による新しい顧客体験」も顧客のツボにハマる上手いサービスや買い物の仕方に変わっていけるかもしれません。小売業とクラウドサービス、ということでいえば、無店舗のネット販売がすぐに思い浮かべるようになっていますが、リアル店舗の改革の原動力にもなっているのです。

「 コラム 」一覧

pagetop