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一般社団法人クラウド活用・地域ICT投資促進協議会(CLOUDIL)によるコラムです

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CLOUDILコラム: 2020年8月

運輸・物流業界が今求めているクラウドサービスとは?

 ひと口に運輸・物流業界と言ってもさまざまな業種業態があります。そこで今回は、その中でも業務のシステム化が進みづらいと言われている「配送事業者」に着目し、必要とされるクラウドサービスとはどんなものなのかについて考えてみます。

●クラウドサービスの利用を見越し、さまざまな車両にIoTが導入される

 まずIoTの活用を推進するクラウドサービスが今後ますます求められていくはずです。具体的にはトラック配送で利用される車両や、倉庫など物流センターで利用されるフォークリフトなどの輸送機器に対し、IoTによって管理していくことが常識となっていくでしょう。
 海運や空輸、または鉄道輸送に使う車両などには、以前からセンサーなどが取り付けられ、燃料を効率的に活用するためのシステムが構築されてきました。しかし、トラックやフォークリフトなどは稼働数が多く、扱う企業も小規模なところが多いため、IoTによるシステム化を実施しようにも初期導入費用やランニングコストが現実的ではない、という時代が長く続きました。
 ところが、センサーの小型化・低価格化によって車両のサイズを問わずIoTの導入が加速し、リアルタイムで運転状況やエンジン回りなどの状態把握を記録できるようになりました。今では、さまざまなメーカーが機械学習アルゴリズムによってエンジンなどの異常を先回りして察知できるシステムなどを研究しています。

●小口配送の世界にクラウドサービスが浸透していく事情とは

 かつては、このような最新技術を利用したシステムは、中小企業の多い配送業者にとっては「オーバースペック」だという意見もありました。しかし、最近は小口の配送事業においても、海運や空輸、大規模なロジスティクス企業などと同様に徹底したコスト削減を行わなければ生き残っていけません。
 現在のコロナ禍によって「巣ごもり消費」が隆盛となり、宅配便などの小口配送業は売上も伸びて活況だと言われていますが、その分、市場参入する事業者が増え競争が激化するなど、利益が必ずしも順調に伸長しているとは言えません。
 そのため、少しでも燃料費やタイヤの摩耗度などを減らしてコスト削減に努めていかなければなりません。そこで必要になるのがIoTによる各車両の利用状況の管理であり、管理システムを安価に利用できるクラウドサービスです。
 システム化にかけた費用よりも、燃料やタイヤ、そして車両のメンテナンスコストが安くなれば、小規模な会社でも管理システムを導入するメリットが得られます。問題はシステム導入の初期費用ですが、クラウドサービスなら比較的取り扱いがしやすい価格まで落とすことができますし、すぐに利用を中止することも可能です。

●「利益なき繁忙」に埋もれないためには

 野村総合研究所によると、企業/消費者間の電子商取引市場は2014年が約14兆円でしたが、2022年には26兆円とほぼ倍の規模にまで拡大すると言われています。一方で全日本トラック協会「トラック運送業界の景況感」によると、約6割以上の企業がドライバー不足であると感じていることが分かっています。つまり、何も手を打たないでいると「利益なき繁忙」の中に埋もれていく危険性があるということです。
体力的にもきつい業界では、すぐに人手不足に陥る傾向にありますが、待遇面や労働条件の改善など、何らかの対策を講じる必要があります。さらに言うと今後は、社員であるドライバーの運転技術についても細かく指摘していかなければならない事態になるでしょう。
現場の方なら周知のことですが、運転技術の優劣で、燃料費もタイヤの交換ペースも、エンジンの寿命も大きく変わってきます。これは、故障だけでなく事故などのリスクにも密接に関連してきます。
 筆者は広い倉庫で使うフォークリフトのIoT化について取材をした経験がありますが、その中でフォークリフトも運転技術が大きくメンテナンスコストに影響するということを聞きました。さらに、「運転のデータをリアルタイムで記録する」というだけで、現場からかなり反発があったそうです。どんなテクノロジーもすぐさま受け入れられるとは限らないのです。

●クラウドサービスの利用を前向きに捉えた組織が勝つ

 IoTを活用するクラウドサービスを導入することで、今までベテランの現場担当者しかわからなかった個々のスタッフの仕事レベルが客観的にデータ化、可視化され、評価できるようになります。データから得られた各人への評価が「人事考課制度」に影響を及ぼすことが考えられるため、少なからず現場には衝撃が走るはずです。しかし、データ活用を避けていては組織としての生き残りは難しいでしょう。
 要するに管理する側、管理される側の双方が、納得して先述のようなクラウドサービスを活用していくしかないのです。クラウドサービスがさまざまな形で導入されていく中で、新しい形での管理手法が展開されることになります。「理想論」を語るのではなく、管理手法を「スキル開発」「技術力と品質向上」などの全社的な運動へと転換していくのが最善と言えるでしょう。
 現場のドライバーたちに新しいクラウドサービスを「スキル開発」や「技術力と品質向上」の機会として捉えてもらうようにする。それに成功した組織こそが、厳しい環境を新しい技術によって切り拓く企業に成長していけることでしょう。

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