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農業分野にデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要な理由と主な取り組み

 2021.11.22  CLOUDIL 【クラウディル】

さまざまな課題や問題を抱える日本の農業構造が今、大きく変わろうとしています。その要となるのが、デジタル技術の活用による「デジタルトランスフォーメーション」の実現です。本記事では、農業分野においてデジタルトランスフォーメーションが求められている理由を解説するとともに、その実現に向けた具体的な取り組みをご紹介します。

農業分野におけるDXとは?

「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」とは、デジタル技術の活用によって、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向へと変革する取り組みを指します。DXは、とりわけ製造業において注目を集めている概念です。ものづくりの分野では、AIやIoTの活用によって生産体制そのものに変革をもたらし、市場における競争優位性を確立する取り組みと定義されます。

さまざまな産業で推進されているDXですが、最も優先的に取り組むべき業界とされているのが農業分野です。18世紀後半から19世紀前半にかけて、英国で蒸気機関による技術革新「第1次産業革命」が起こり、生産活動の中心は農業から工業へと移り変わりました。産業革命以降、テクノロジーは加速度的に発展し、19世紀後半には石油と電力による「第2次産業革命」が、20世紀後半にはコンピュータによる「第3次産業革命」が起こります。

テクノロジーの進歩・発展に伴って、さまざまな産業が近代化していく一方で、農業分野のデジタル活用はほかの産業と比較して遅れており、断片的にしか近代化が進んでいません。さらに農業産出額や農業従事者数は年々減少し続けており、国内の農業構造そのものが衰退傾向にあります。こうした農業生産の構造そのものに変革をもたらすべく、近年推進されているのが「農業DX構想」です。

農業DX構想とは、2021年3月に農林水産省によって提唱された概念で、国内の農業分野が抱えている構造的な問題を解決すべく、DXを推進する取り組みを指します。現代はAIやIoTによる技術革新「第4次産業革命」の黎明期といわれており、さまざまな産業が大きく飛躍する可能性を秘めています。こうした技術革新を用いて、農業構造の近代化を目指す取り組みが、農業分野におけるDXです。
(参照:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/joho/attach/pdf/210325-18.pdf

なぜ農業でDX推進が必要なのか

農業分野でDX実現が喫緊の課題となっている背景には、農業従事者の高齢化と、それに伴う労働力不足の2つの要因が関係しています。農林水産省の調査によると、2020年度の農業従事者の平均年齢は67.8歳で、そのうち約7割が65歳以上の高齢者となっています。

そもそも国内の総人口は、2008年の1億2,808万人をピークに下降の一途を辿っており、生産年齢人口も1992年の69.8%を頂点として減少し続けています。

このような社会的背景も相まって、農業分野では農業従事者の高齢化と労働力不足という課題が深刻化しているのです。先述したように、農業産出額と農業従事者数も衰退傾向が続いており、このまま衰退が続けば食料自給率のさらなる低迷を招き、ひいては国力そのものの低下につながりかねません。

日本は古くから「瑞穂の国」と呼ばれており、「農は国の基」という言葉が示す通り、農業は国の政治経済の基本ともいうべき産業です。そして、衰退傾向にある農業分野を活性化するためには、AIやIoTといった技術革新による生産体制の抜本的な変革が欠かせません。だからこそ、衰退傾向にある農業生産を活性化すべく、DX実現が焦眉の急を要する課題となっているのです。

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農業におけるデジタル技術活用の現状と課題

これまで農業の領域は、ほかの産業と比較してデジタル化が困難な分野であると考えられていました。しかし、テクノロジーの進歩に伴ってデジタル技術の汎用化が進んでおり、今や農業分野でも無人トラクターやドローン技術、IoTによる農作物のデータ管理などが普及しつつあります。たとえば、農業の生産体制にIoTセンサーを取り入れ、情報分析基盤と連携することで、データを駆使した効率的な栽培管理や土壌管理が実現します。

しかし現状、こうしたデジタル技術を活用している農業生産者は決して多くありません。農業DXを実現するためには、ITインフラを整備する必要があり、それには相応の費用が必要です。そのため、資金力に乏しい小規模の農業生産者では、生産体制をデジタル化へシフトすることは簡単ではないでしょう。また、デジタル技術を農業の領域に活用するノウハウも確立されているとは言い難く、投資に見合ったリターンを得られる保証はありません。

このような状況を踏まえ、農林水産省は一定要件を満たした農業生産者に対し、補助金や交付金を給付する制度を整備しています。従来、こうした補助金・交付金の申請手続きは、紙媒体による申請・審査が一般的でしたが、2020年4月より一部の手続についてオンライン申請が可能となっています。また農林水産省は、農業者向けのスマホ用アプリ「MAFFアプリ」を開発・提供したり、起業促進プログラム「INACOME(イナカム)」を推進したりと、農業DXの実現に向けてさまざまな取り組みを実施しています。

農業DX実現に向けた主な取り組み

ここからは、農業DXの実現に向けた具体的な取り組みについて見ていきましょう。農業における生産体制をデジタルシフトし、構造そのものに変革をもたらすためには、以下の3つの取り組みが必要です。

  • スマート農業
  • 行政の効率化
  • データ連携・流通の促進

スマート農業

「スマート農業」とは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用し、生産性向上や品質向上を図る先進的な農業構造を指します。携帯電話のスマート化が人々の暮らしを大きく変えたように、スマート農業は農業生産の在り方に大きな変革をもたらす概念といえるでしょう。具体的には、収穫用ロボットや農薬散布ドローン、自動走行トラクターなどを活用し、省人化・自動化を実現した農業生産体制がスマート農業です。

行政の効率化

農業DXを実現するためには、農業の現場だけでなく行政のデジタル変革も必要です。具体例としては、政策の見直しや人材育成推進プロジェクト、農地情報の一元化などが挙げられます。先述したように、農業DX構想は農林水産省が推進している概念であり、補助金や交付金のオンライン申請サービス「eMAFF」を整備したり、スマホ用アプリの「MAFFアプリ」を開発したりと、農業DXの実現に向けて行政のデジタル化が進んでいます。

データ連携・流通の促進

農作物が消費者の手元に届くまでには、卸売市場を経由する物流や小売店での販売など、他業種との関わりがあります。農業DXを実現するためには、こうした物流業や販売業とのスムーズなデータ連携が不可欠であり、そのためにはITインフラの環境整備が必要です。また、農業DXは官民一体となって取り組む必要があり、行政と農業生産者との連携も求められます。そのため、生産体制のデジタル化だけでなく、他業種や行政との連携を促進できるよう、情報共有基盤のデジタルシフトも必要です。

まとめ

高度経済成長に伴って就労構造が大きく変化し、若年層の農業従事者は年々減少傾向にあります。それに伴って、長きにわたって日本の食料自給を支えてきた農業は現在、衰退の一途を辿っているのが実情です。このような状況を打破し、農業分野の活性化を目指す取り組みが、デジタル技術の活用による農業DXです。

農林水産省でも補助金制度のオンライン申請やスマホ用アプリの開発、起業促進プログラムの推進など、農業DXの実現に向けてさまざまな取り組みを実施しています。まだまだ多くの課題があるものの、農業の生産体制に変革をもたらす「農業DX構想」の実現はそう遠くないといえるでしょう。ぜひ、本記事を参考にして農業生産のデジタル化に取り組んでみてください。

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