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事業承継とは? M&Aなどの手法やリスク・成功のコツを紹介

 2021.10.06  CLOUDIL 【クラウディル】

高齢化するにつれて、自分の引退時期を考え、今後の会社をどうしていくべきか悩んでいる、中小企業の経営者は少なくありません。近年は少子化によって、後継者探しも容易ではなく、事業承継が実現するまでには長い時間を要します。そこで本記事では、事業承継の基礎知識と主な手法、リスクなどについて解説します。

事業承継とは

「事業承継」とは、会社の経営権や資産など、事業に関するすべてのものを、後継者にバトンタッチすることを表します。中小企業では、経営基盤が社長の手腕に依存していることが多いため、誰を後継者に選ぶのかという問題は、単なる人事の粋を超えた重要な経営課題です。先代の引退後、後継者が安定的に経営に専念できる環境を整えるためには、さまざまなものを引き継ぐ必要があります。一般的には経営(経営権、従業員など)、資産(株式、事業用資産、資金など)、知的資産(経営理念、技術・ノウハウ、取引先との人脈、顧客情報など)の3つが、事業承継における引き継ぎ対象となります。

「社長交代」との違い

事業承継の定義づけには、さまざまな解釈がありますが、「社長交代」とは何が異なるのでしょうか。まず、中小企業と大企業とでは、社長交代の意味合いが大きく変わってきます。多くの従業員を抱える大企業であれば、社内やグループ会社の中から後継者を選出することは、さほど難しくありません。同族企業とは異なり、社長も雇われの身であるため、社内の事情によっては社長の電撃解任なども起こり得ます。それに対し、ほとんどの中小企業では、創業家が経営の支配権を握って、代々社長を引き継いでいるので、後継者として選べる人材も限られています。

また、後継者さえ確保できればよいというわけではなく、社長の個人保証や自社株の相続といった、会社の資産および所有に関する問題も付随してきます。その上、誰が会社を継ぐにしても、先代の知的資産を承継するには、数年単位の時間を要します。このような事情から、中小企業において後継者にバトンタッチする場合、社長交代という表現ではなく、事業承継として扱われているのです。

「事業譲渡」との違い

「事業譲渡」とは、会社の事業を譲り渡すことを指し、簡単にいえば第三者企業による買収です。売り手側は、譲渡領域を指定できるほか、全事業もしくは一部事業のみの譲渡も可能です。相手企業に事業譲渡の範囲と買収価格を提示してもらい、双方が条件に合意したら、取締役会の承認を得た上で譲渡契約を締結します。

事業譲渡は、主に経営が赤字である場合に、メリットの大きいバトンタッチの方法といえます。売り手側は、事業を売却することで資金を獲得できるとともに、会社そのものは解体されたとしても、従業員の雇用や長年培ってきたノウハウを存続させられます。その一方、事業譲渡は経営者の一存で決定できるものではなく、債権者や従業員と個別に、契約承継手続きを行う必要があり、譲渡が完了するまでに時間がかかる点がデメリットです。

また、譲渡後の20年間は「競業避止義務」が発生し、同一の市町村や隣接する市町村で、譲渡した事業と同じ事業を行うことが禁止されているほか、譲渡で得た資金に法人税が課される点にも注意が必要です。

事業承継の現状

近年の日本において、中小企業の経営者は60代以上が8割を占めており、後継者が見つからないまま、高齢化が進んでいるのが現状です。また、時代の流れに比例して事業承継の方法も変化し、かつての主流だった親族内承継から、M&Aをはじめとする親族外承継が増加傾向にあります。

親族外承継が増えている背景には、「子どもがおらず後継者が見つからない」「子どもに事業を引き継ぐ意思がない」といったケースが増えている影響もありますが、M&Aへの社会的イメージが変化していることも関係しています。M&Aと聞くと、従来は「身売り」や「乗っ取り」といった、否定的なイメージを持たれがちでした。しかし近年では、取締役会の同意を得ずに行われる「戦略的M&A」の印象が薄まり、経営陣同士の納得のもと、売り手と買い手の双方にメリットがもたらされる「友好的M&A」が、会社存続の手段として認知されつつあるようです。

主な事業承継の方法

ここまでの解説でも触れていますが、事業承継では「親族内承継」「社内承継」「M&A」という、主に3つの手法が用いられています。

親族内承継

その名の通り、経営者の子どもなどの親族にバトンタッチすることです。中小企業においては、最も一般的な手法ですが、少子高齢化や職業選択の自由の広がりとともに、年々減少傾向にあります。親族内承継のメリットは、早期から後継者を指名しておけば、世代交代までに経営者育成のための準備に時間をかけられることや、社内の従業員や金融機関、取引先からの理解や協力を得やすいことなどが挙げられます。

後継者が経営を引き継ぐには、大きく分けて「譲渡」「相続」「贈与」という、3つの手法が取られています。

後継者が先代から株式を買い取る譲渡は、高額な資金を用意しなければならず、費用面での負担が大きいことがネックとなります。そのため、後継者に資金的な負担をかけたくない場合には、相続や贈与によって、自社株や事業用資産を引き継ぐ方法が一般的です。相続や贈与を受けると、相続税および贈与税の納税義務が生じますが、一定の要件を満たしていれば、納税を猶予もしくは免除する、「事業承継税制」という制度が設けられています。

さらに、平成30年の税制改正により、納税猶予対象となる自社株数の制限撤廃、納税猶予割合の引き上げなど、10年間限定の特例措置が創設されており、以前に比べると、事業承継のハードルは格段に下げられたといえるでしょう。

社内承継

社内で働く親族外の従業員に、事業を承継するケースも増えつつあります。親族の中に後継者にふさわしい人物がいない、あるいは経営者の方針により、子どもには自由な生き方をしてほしいと考える場合には、社内から適任者を探して承継することになります。経営者が売却した自社株を後継者が買い取るため、その後の経営で意見が通りやすくなる点が社内承継のメリットです。

その一方、社内承継も親族内承継と同様、譲渡・相続・贈与のいずれかの方法によって行われるため、資金力が求められることや、事業資金を金融機関から借り入れる際に、現在の経営者が連帯保証人になっていた場合、後継者が個人保証を引き継がなければならないことなどに注意が必要です。

M&A

M&Aとは、「買収・合併」を意味する「Merger and Acquisitions」の頭文字を取った言葉です。業承継の手法としては、会社の事業や経営権を事業会社、もしくはファンドなどの第三者に売却することを指します。親族や社内に経営を任せられる人材がいない場合の後継者探しに加え、不採算企業を手放して、会社の収支を立て直す手法としてもよく用いられています。買い手にとって、事業拡大や技術・ノウハウの承継、人材の確保の手立てとなるため、売り手と買い手がWin−Win、つまり双方が利益を得られるメリットがあります。

ただし、売却額は買い手との交渉によって決まるので、売り手が望む価格で売却できるとは限りません。また、相手企業との相性や文化の違いによっては、想定していた相乗効果が発揮されないこともあるほか、元々所属していた人材がM&Aを機に、会社を去ってしまうおそれもあります。

事業承継の流れ

いずれの方法を採用するにしても、事業承継を行う上では、共通の手順があります。

事業計画書を作成する

「事業計画書」とは、今後どのように事業を運営していくのか、という具体的な計画を内外に示すための書類のことです。事業承継の概要(現経営者や後継者の指名、承継方法、承継次期)、経営理念・事業の中長期目標、事業承継を円滑に行うための対策などを記入します。事業承継経営者と後継者・親族の認識をすり合わせ、関係者からの理解を得やすくするほか、事業承継税制の適用を受けるためにも、事業計画書の作成が必要です。事業計画書は、金融機関からの融資を受ける際にも活用され、説得力のある計画書を提示できなければ、資金調達が厳しくなることもあります。

税金対策をする

後継者は、現経営者から事業を引き継ぐために、多額の資金を用意しなければなりません。また、自社株を相続したり贈与を受けたりすれば、納税の義務も生じます。税金を考慮せずに事業承継をしてしまうと、後継者が納税資金の確保に苦労することになり、経営どころではなくなってしまうかもしれません。

しかし、節税措置を活用すれば、後継者の納税負担の軽減が可能です。納税が猶予・免除される事業承継税制のほかにも、生前贈与された自社株を親族への遺留分から除く「除外特例」や、同じく自社株の評価額を固定する「固定特例」などがあるため、あらかじめ税理士などに活用できる特例がないか相談し、節税対策を練っておきましょう。

補助金などを活用し、経営を改善する

事業承継の前に、可能な限り会社の経営状況を良好にしておくことも大切です。収支を改善して後継者の負担を減らすためにも、補助金などを利用して、できるだけ資金を調達しておきましょう。

たとえば、中小企業庁が運営する「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業承継やM&Aによる経営革新、事業の引き継ぎを計画している中小企業・小規模事業者を対象に、発生する経費の一部を補助してもらえる制度です。毎年要件が異なるため、詳しい公募要領や申請方法は、中小企業庁のホームページを参照してみてください。

事業承継のリスク

中小企業の事業承継には、さまざまなリスクが伴います。経営状態が芳しくなく多額の負債を抱えている場合や、赤字期間が長期化している場合には、後継者が現経営者の個人保証を引き継ぐことを、金融機関から要求されることになるでしょう。経営状態によっては、後継者を指名しても引き継ぎを断られてしまうかもしれません。

また、後継者の選出に対して、従業員や現経営者の親族から理解が得られない場合には、その後の経営に苦慮することも考えられます。

事業承継成功のポイント

事業承継のリスクを回避するには、次期的な余裕を持って準備を進め、相続や贈与に関するトラブルが起こらないよう、対策を立てておくことが重要です。

5年以上前から準備する

後継者の選定や育成、関係者への周知と説得、事業計画の作成、収支の改善、税金対策など、事業承継までにやるべきことはたくさんあるため、時間がかかることを見越して、早めに取り掛かる必要があります。5年以上前から準備しておいても、早すぎることはありません。必要に応じて、コンサルティング会社に相談することも検討しましょう。

相続トラブル対策

相続トラブルが発生しないよう、十分な対策を採ることも忘れてはならないポイントです。特に、現経営者の子どもに事業を引き継ぐ場合には、後継者以外の相続人と揉めるケースが少なくありません。株式や事業用資産を経営者個人が所有していた場合、何の取り決めもないまま、現経営者が死亡してしまうと、経営とは無関係な法定相続人にも、これらの資産が承継されてしまうことになり、会社経営に支障をきたすおそれがあります。

また、現経営者が後継者を指名しないまま亡くなってしまった場合、経営者の本意ではない人物に経営権が渡り、経営権を巡って、親族間で争いに発展することも考えられます。そうした事態を回避するためにも、遺言によって会社の株式や重要な資産を後継者に残し、株式を生前贈与した場合には、持ち戻し免除の意思表示をしておくことが大切です。

まとめ

これまで、オーナー社長の手腕に依存していた企業であれば、上位下達の経営方針が定着しているかもしれません。しかし、後継者が先代と同じ方法を踏襲するのは、いとも簡単ではありません。新体制に移行する上では、ビジネスチャットなどのITツールを活用し、経営者と従業員、さらには従業員同士のコミュニケーションを活性化させて、経営方針と企業文化を変えていくことが大切です。

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